一ヶ月ほど間が空いてしまいましたが、今回は生地や糸について書かせて頂きます。(専門学校時代に習った事を思い出しながら)
当店でもそうですが、他のお店の商品紹介や説明を見ると糸の撚りがどうとか、高密度の生地だとか、専門的な用語で色々と書かれています。説明する側は当たり前のように書いていますが、果たしてお客様にはどれだけ伝わっているのか疑問がありました。
そこで具体的にどういった事を言っているのかを説明させていただければと思います。生地や糸の事が分かれば、また洋服を見る目が変わって楽しいかと思います。
まずは糸ですが、コットンなら綿花から取れた繊維を、ウールなら羊から取れた繊維を糸にする工程がありこれを「紡績」と言います。この糸になる繊維が長いものを長繊維、短いものを短繊維と呼びます。この繊維が長いものほど高価になり、代表的なものがシーアイランドコットンやスビンコットンと呼ばれる超長綿です。
次に紡績した糸に撚り(より)をかけて強度を出します。この撚り回数が少ないものを甘撚り(甘撚糸)、多いものを強撚糸と言います。撚りが甘い方が繊維の光沢が出て柔い糸に、強撚すると糸の強度は上がり皺になりにくく、さらっとした触り心地の生地になりますが光沢感は落ちます。この糸の撚りはどう言った生地にしたいのかで変わってきて、ここの調整を指示するのがデザイナーさんの役割の一つでもあります。
上の図が分かりやすく、左が通常の撚り、真ん中が甘撚り、右が強撚糸です。
こうして出来た糸を生地にしていくのですが、一本の糸を単糸、二本を撚って一本の糸にしたものを双糸、2色の違う色の糸を双糸にしたものを杢糸と言います。数字だと80/1、120/2のように書き、これは前の数字が糸の太さを表し、後ろが単糸か双糸を表しています(3本を撚った3子撚りなんてのもあります)糸の太さは番手と呼び、数字が小さいほど太くなり、大きくなるほど細くなります。番手が細い糸ほど繊細で綺麗な生地ができ、特にシャツ生地が分かり易いかと思います。
こうして出来た糸を生地に成形していくのですが、ここでも大きく二つの種類に分かれます。糸を織って生地にする織り物(布帛)と編んで生地にする編み物(ニット)です。シャツやジャケット、コートなどに使われる生地が織り物、カットソーやセーターの生地が編み物ですね(これは知っている方も多いと思いますが)。
特に織り物によく使われる高密度という言葉ですが、これは簡単に言えば生地を織る時にどれだけ糸と糸の間に隙間が無いかという事です。高密度の代表的な生地で言えばベンタイルで、NICENESSのコート(DALTREY)に使われている生地です。
高密度のメリットは生地に張り感が出て撥水性もあります。更に空気の出入り口が少ないので保温性があることも特徴です。
では密度が甘い生地はどんなものがあるかと言うと、一番わかりやすいものがレディースに多いレース生地です。透け感が出てふんわり柔らかいのが特徴で、チュールスカートなどのアイテムに使われる事が多いです。タフな作りや経年変化を好むメンズ服にはほとんど使われる事がない生地ですね。
もちろん、メンズ服にも甘織りの生地を使う事はあります。画像のMAATEEが出したシルクのチェック生地なんかは密度が甘く織られています。甘織りにすることでシルク特有のしなやかで緩さのある生地に仕上がるんですね(レースのように極端な甘織りではないですよ)。
上の図が布帛生地の組織図なんですが、グレーが経糸(たていと)・黒が緯糸(よこいと)です。1インチに対してこの糸の間の白い部分が詰まってるほど生地密度が高い、隙間があるほど密度が甘いと言われます。織機は固定された縦糸に対して緯糸を打ち込んでいくので、糸の本数が多く高密度の生地を打ち込みがいいとも言います。
ちょっと長くなってしまったので今回はここまでにさせて頂きます。書きたい事はまだまだあるので、その2に続きます。